大人のふりを、やめる。

このところ、いっぱい恥をかいている。
だけど、はじめから「よし、恥をかいていこう」と思ってやっているので、あんまりダメージを受けないというか、むしろ想定よりも大丈夫だったな、ということが多い。

ということはその逆もあるということで、「ここはかっこつけなきゃ」と思っているときに恥をかくと、想定以上にダメージを受けてしまうように思う。
別にかっこつけることがダメだとはまったく思わない。
ただ、ぼくの場合はなんというか、かっこつけることに向いてない。

子どもの頃から、かっこいいやつ、というのはいた。
普通にしているだけでかっこいいし、何もしてないのにモテるし、ダサいことは絶対にしない。
で、たまに一言だけ面白いこと(いや、たいして面白くもないこと)を言うだけで、みんながキャーキャー言う。
そういうやつに憧れて、自分もわざと渋い声でしゃべろうとしたり、何か難しいことを考えているフリをしたり、表面的なものまねを色々とやってみたけれど、なぜかうまくいかない。
いや、なぜなのかははっきりしている。
ぼくは、かっこつけることに向いてないのである。

だからなんだという話だが、年を取って、変にこじらせてくるとけっこう厄介だ。
いい大人がダサいことやっちゃいけないとか、かしこいふりをしなきゃとか、物分かりがいい感じを出さなきゃとか、一体いつからそう思うようになったのかさっぱり覚えていないが、とにかく大人のふりをしようとしてしまう。
さらに厄介なことに、無駄に年を取っているせいで、周りも「あ…痛いな…」と心の中では思いつつ、いぬじんさんって渋いですよねえとか、大人ですよねえとか、思ってもいないことを言って気をつかうので、フィードバックが得られない。
本当はぼくもなんとなく気づいているのである。
どうもスベってるよな…なんか違和感あるよな…と。
だけど、誰もそんなこと言ってなかったしな…渋いとか言われたしな…と自分に言い聞かせて、裸の王様を続けることになる。

裸の王様といえば、別にぼくはいつだって裸なのである。
自分はかしこい人にしか見えない服を着ているんだと気取っているのと、自分は本当に裸なのだとわかっているのとの違いがあるだけである。
ただまあ、自分が裸だとわかっていれば、あんた裸じゃねえかと言われた時のショックが小さい。
ただそれだけの話である。

なんにせよ、この年になって、ようやくあきらめがついたというか、かっこつけるのに向いてないことに気づいたというか、まあ人間素直が一番だというくらいのシンプルな話なのだが、それはぼくにとってはけっこう大事なことだと思ったので書いた。

みんなはどうなのだろう。
小さい頃から大人になるまで、ずっとかっこいい、ずっと渋い人たちは少なからずいると思うのだが、こういう人たちは一体どういうことを考えて暮らしているのだろう、というのは気になる。
まあどうせ、いやあオレだって恥をかきながら生きてるよ、とかなんとか渋い声で言うだけなんだろうけど。

あれ、まだ気になっちゃってるじゃない。