最近、ひそかに尊敬している人がいる。
ある日、彼女の仕事の領域について
「あのね、勝手にこんなこと考えちゃったんだけど、どうですかね」
とか言って、無神経な僕はアイデアを書いて見せた。
たぶん、ここは苦言を呈していいところである。
でも、彼女の第一声は
「うわ~、ありがとうございます!」
だった。
「ありがとうございます!
いいアイデアですねえ!おもしろいです!
えっとぉ、ちなみにこの題材なら他にも
いくつか切り口があるかも。
私も企画を出しちゃってもいいですか~?」
完璧だなあと思った。
これは、僕が師匠から学んだ
「相手をいったん受け入れる」技術と同じだ。
師匠はよく言っていた。
よく覚えておけよ。
オレたちだけがアイデアマンだと思ったら大間違い。
みんな、色んなアイデアを考えながら仕事をしている。
だから自分の考えを伝えたければ
まずは相手の意見や発想を受け入れろ。
あなたと一緒にいいアイデアを作っていきたいという
態度を、まず示せ。
これは頭では理解できるのだが
実践するのがものすごく難しい。
クライアントや上司がつまんないアイデアを言うと
僕はすぐに
「う~ん・・・」
なんて偉そうな声を出して、黙り込んでしまうのだ。
そんなわけで
たいした才能もないくせに自尊心が高い僕は
「受け入れる」技術をついにモノにできなかった。
それをさらっと見せつけられて
純粋にうらやましいなあ、と思った。
彼女だってひょっとしたら
昨日、恋人と大喧嘩してたかもしれない。
朝の満員電車で隣の人から思い切り
肘鉄を顔面に受けたかもしれない。
会社に着くなりキャラメルマキアートを
デスクでひっくり返して
お気に入りの服を汚したかもしれない。
だけど、明るく
「うわ~!ありがとうございます!」
とまず相手の(くだらん)思いつきを受け入れる。
これは、もう達人の域である。
他にも彼女には色々とすごいところがあるのだが
長くなったので、また今度。