お祝いの、言葉。


このたびは、合格おめでとう。



長い長い冬が無事に終わりを迎えたことを、本当にうれしく思う。

ぼくは心からホッとしている。


そして、地獄へようこそ。


ここから先は答えがない。

取り組むべき問題も、手に入れるべき能力も、仲良くするべき人間も、まったくわからない中を、何の見通しもないまま進んでいかなきゃいけない。

正確に言えば、進んでいるかどうかもわからない。

ひょっとしたら君はある程度専門的な領域を学ぶのだからそんなに迷わないつもりでいるかもしれないが、残念ながらそんな簡単に世の中はできていない。

準備万端でいざ飛び立とうとするその瞬間に航空ルールが大きく変わることなんてことは、しょっちゅうだ。

うまくフライトできたとしても、天気は常に予想外の方向へと変わっていく。

そうだ、問題が深刻になるのは得てして旅立つまでよりも、旅立ったあとのほうだ。

いますぐパラシュートで脱出するべきか、それとも様子を見るべきか、まったく判断材料がない中で、決めるときは決めなきゃいけない。

運が良ければ君は「手遅れだった」という事態に、致命的なダメージを受けずに居合わせることができるだろう。

そしてそこで大きな学びを得ることができるだろう。

しかし運が悪ければ、それが手遅れだったと気づいても何の意味もないような、ひどい状況に陥ることもあるだろう。

そしてそのまま這い上がることのできない亡者たちの群れに引き込まれることもあるだろう。

まったくひどいもんだよ、この世の中は。

よくこんなひどい地獄にやってこようなんて思ったもんだ。


しかし君は思うだろう。


なんだ、これまでと同じじゃないか。


そうだ、それでいい。

これまでが孤独な地獄なら、これからはにぎやかな地獄だ。

同じ地獄ならみんなでワーワーやかましくしてるほうがまあちょっとは楽しめるだろう。

責め苦のアトラクションに身も心も消耗しきることがあったら、血の池地獄にでも浸かって、このくだらない人生についておたがいに語り合おうじゃないか。

そして、またボロボロになりながら這い上がっていこうじゃないか。


このたびは、合格、本当におめでとう。