グルメ番組というやつが嫌いで、赤の他人がうまそうに食べているのを、ただ画面ごしに指をくわえて見るだけの何がうれしいんだ、こっちは一切食えるわけもないのに他人が自分の欲望を満たすのを見せつけられて面白いはずがない。
しかし年を取って自分のできることが減ってくると、ただ眺めているだけで何か自分の気持ちが満たされていくなあと感じる場面が増えた気がする。
例えば小さい子どもが夢中になって遊んるのを見るのは、それが自分の子どもでなくても、なんだかほっと気持ちが落ち着くし、ずっと見ていたいなあという気持ちになる。
あるいは人が集まって楽しそうにお祭りや催しの準備をしているのを見るのもいい。
彼らはいつまでも同じ場所にダラダラととどまらず、一時的に集まっているだけ、というところもよい。
それから自分のよくわからない分野について専門家同士が淡々と、しかし静かな情熱を秘めて打ち合わせしているのを見るのも好きだ。
グルメ番組は嫌いだと言ったが、グルメ番組を見てうれしそうにワーワー言っている妻を見るのは好きだ。
結局、この世の中で自分のできることなんてほとんどなくて、自分なんかいなくても何の問題もなく世界は回っていて、それをただ眺めていられる時間が好きなのかもしれない。
なんだか変な話ではあるけれども。