人間はどうも、自分以外の人間を不幸だと思いたがる生き物だ。
おまけに、相手のその不幸を満たすことができるのは自分しかいないと、そう思いたがる。
世の中に自分のことを不幸だと思っている人が多いのは、そうやって、「相手の課題を見つけたがる」人間が増えているからじゃないだろうか。
かくいうぼくだって「御社における課題はこれです」「それを解決できるのは我々しかいません」とばかり言ってる。
しかしもう、この「課題解決メソッド」は終わりにしよう。
その代わりに「きもちAメソッド」というものを紹介したい。
きもちAメソッドの要点はすごくシンプルだ。
まずは物事が「きもちえーかどうか」から始めるのだ。
課題解決メソッドでは、課題、つまり悩みや不幸とその原因を探すことが重要だけど、きもちAメソッドはちがう。
今よりももっと気持ちよくなりたいと願うことから始める。
どんな風にすれば、もっと心地よい気分になれるかを、徹底的に考える。
「もっと」という、人間の根源的欲望を肯定する。
そして「きもちえーこと」がありそうなら、どんどん試していく。
これも課題解決メソッドとは逆。
解決方法を引き算でしぼりこんで最適なものを見つけるのではなく、とにかくどんどんやっていく。
で、本当に「きもちえー」と思えたら、どんどんハマっていく。
もし、ちょっと不快だなとか、なんか違うなって思ったら、別の方法をまた色々と試してみる。
これを繰り返すだけらしい。
とても、シンプルだ。
ただし、この「きもちAメソッド」には、ひとつだけルールがあるという。
それは自分の「きもちえー」にウソをつかないこと。
もちろん相手の「きもちえー」を無理に曲げさせてもいけない。
だから複数人で何かをやる場合は、お互いの「きもちえー」に共感できるかどうかが重要なのだ。
そうなると選択は二つ。
はじめから「きもちえー」ことが同じ人間同士で始めること。
そしてもうひとつは、おたがいが、これは「きもちえー」と思えるものを見つけ出すこと。
もちろん、後者のほうが難度が高いが心配はいらない。
魔法の言葉がある。
「こういうの、どう?」
これを会話の頭につけるだけで、二人の距離はグッと近づくはずだ。
「きもちAメソッド」の要点はたったのこれだけである。
今ぼくらが親しんでいる「何が課題で、何がそれを解決する方法か」という思考方法は、限られた資源を奪い合うきびしい戦場における技術だ。
どこに資源が残されていて、どうやったらそれを効率的、効果的に獲得できるかを追求するノウハウ。
しかしいずれ資源は、なくなる。
いま必要なのは奪う技術ではなく、作り出す技術だ。
それぞれが何かを持ち寄って、新しい資源を生み出す知恵と態度だ。
その鍵を握っているのは、おたがいが心地よいとか楽しいとか思っていることを肯定し、やってみたいものをどんどん試していく、足し算の考え方だと思う。
さて、この「きもちAメソッド」、まだ日本では聞きなれない言葉かもしれないが、それは仕方ない。
いま、ぼくが考えたのだから。