孤独は、大切な友人の一人かもしれない。





僕の実家には、僕が子供の頃に遊んでいたおもちゃや本がいくつか残っていて
自分が遊んでいたウルトラマンとバルタン星人のソフビを戦わせている
息子の姿を見ていると、なんだか不思議な気持ちになる。

絵本や児童書も、意外とキレイな状態で残っているので
(よっぽど僕がちゃんと読んでいなかったんだろう)
これ幸いと何冊も家に持って帰っている。


そんな中に『エルマーのぼうけん』という有名な3部作の児童書がある。


最近は、子供が寝る前にこの本を読んで聞かせているんだけど、
実はこの話、親が子供に読んであげる本ではないようにも思っている。


主人公のエルマー少年は、外で年老いた猫を拾って家に帰る。
しかし、猫が大嫌いな母親に見つかってしまう。
母親は怒り狂い、猫は窓から放り出され、エルマーはムチでたたかれる。

それがこのお話のはじまりである。


子供が冒険に旅立つ時、それは安全で平穏な環境からの離脱を意味する。

そのきっかけがアクシデントであれ、自らの意志であれ、
少年や少女は、これまで自分を守ってくれた存在の庇護から離れて
自分の思考力と行動力で、あらゆる危機を回避していかなければいけない。

そのうち彼らは、自分の力で道を切り開くことの喜びを知る。
そして、この先ずっと付き合わなければいけないことになる
孤独という、表情を持たない不気味な隣人と知りあう。


孤独とは、本当に恐ろしい。

人を不安に陥れ、冷静な判断を失わせるし
長期的に孤独にむしばまれると、心が弱り
思考がどんどん悲観的になり、生きることさえ空虚に思えてくる。

しかし、孤独は僕らに色んなことを教えてくれる。

誰も自分を助けてくれない時、何をすれば助かるのか、その方法を考え抜く力とか
退屈した時には、どうやって自分自身を楽しませればよいかという知恵とか
誰かが自分のそばにいてくれることのありがたさを、素直に喜べる心とか。

そういうことは、教科書には載っていないし、親も先生も教えてくれない。

ましてインターネットで誰とでもつながることができる今は
大人になっても、なかなか経験できないのかもしれない。

孤独は、生命の危機をもたらしかねない恐ろしい存在であり、また同時に、
僕らに冷たい頭と温かい心を与えてくれる、最良の友人の一人でもある。


冒険の物語は、そのことを教えてくれる。

だから、この本は、息子が自分ひとりで読めるようになってから、
また読み直せばいいと思っている。



エルマーのぼうけん 3冊セット (世界傑作童話シリーズ)

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