歴代のウルトラマンで、誰にも正体がバレなかったのは初代だけらしい。
あとのウルトラマンたちはお話のどこかでバレるか、自分からバラしてしまう。
なぜ彼らの正体はバレてしまうのか。
それは、ひとりで、誰にも知られずに地球を救うことがとても難しい作業だからである。
ウルトラマンは、ウルトラマンとしては地球の人びとから感謝され、賞賛されるが、中の人は誰にもほめられないどころか毎回大事なときに行方不明になっていては、そのうち降格なり異動させられる危険とすら隣り合わせなのである。
もちろん、そのような危険など地球の存亡に関わる事態にくらべたらどうでもいいと思える人物がウルトラマンに選ばれるのだろうけれど、その活動が長期にわたって続くとなると、さすがの正義のヒーローも、誰からも感謝されないどころか、「お前はいつも大事な時に何をやってるんだ」なんて仲間から蔑まれ続けてたりして、そりゃあ正体もバラしたくなるのじゃないだろうか。
ぼくらの生活にも少なからずそういう部分があって、誰にも知られずに誰かの役に立つというのはなかなか精神力の強さが必要である。
恋人の前では老人に電車の席を譲っても、ひとりの時は優先座席でタヌキ寝入りするのが人の弱さというものである。
だからほとんどの人は(当然ながらぼくも)、ウルトラマンからは選ばれない。
しかしまあぼくらはウルトラマンになれないことを喜んだほうがいいかもしれなくて、それはバレるかどうかなんて気にせずに堂々と誰かの役に立てるからである。
人間なんだから多少の感謝はされたいし、しかしあまり期待されるのもめんどうだ。
この弱い生身の人間の状態を楽しむほうが、毎週ケガだらけになる光の巨人よりもずっと楽だというものだ。
そんなことを思いながら、子供と一緒に新たにはじまった『ウルトラマンX』を観ている。