ひとつ告白すると、僕はクリエイティブディレクターであるにも関わらず、
ものづくりというものに、それほど情熱を抱いていない。
その先にいる人の反応や、心がどう動いていくか、そればかり見ている。
僕には決して「人を動かす」なんて大それた野望はない。
むしろ、動かされてたまるもんかと思ってる。
ただ、人の心の動きに関心があるだけだ。
どうやったら彼は怒るのか?
どうすれば彼女は笑うのか?
どんな理由で無視されるのか?
こういうことを考えるのは表現者の特権だと思っていたが、
情報革命以降、さまざまなジャンルの人々がそれに関わるようになった。
ひょっとすると今一番、人の心について深い洞察ができるのは
ケータイゲームのエンジニアかもしれない。
たぶん、今後はもっと人の心の動きについては
色々と解明され、技術によってコピーされていくだろう。
僕にはなんとなく予感みたいなものがあって、
結局、心というのは身体活動の単なる一部であり
人間は「生きるために生きる」だけの、単純な存在でしかない、
という結論が、近い将来に出る気がしてる。
これは別に悲しい話でもなんでもない。
そうであればなおさら、僕らは自分たちの命を精一杯に味わい尽くすという態度が、公認されるわけだから。
そんなわけで、僕は考え続けている。
人がとびきり上機嫌に毎日を送るにはどうしたらいいのかを。
そして、その喜びをどうやって次の世代に引き継いで、
どうやって機嫌よく死んでいくかを。