この年末を、生き抜くために。





厳しい季節がやってきた。



そろそろ忘年会だの忘年会だの忘年会だのと、何かと資金が必要になってくる。

今日は部の飲み会、今日は課の飲み会、今日は得意先との飲み会、そして今日はメガネ同好会での飲み会と、あまりに続くと本当に財布がもたない。

その辛さに耐えかねて家計からの臨時予算を申請したいのはやまやまだが、しかしこの時期、家庭も火の車。

息子のクリスマスプレゼントのクオリティをあまりにも落とせば、そろそろ敏感になってきた息子のことなので「あのさ・・・サンタ・・・いないよね・・・次からお金でちょうだい」などのトリクルダウンも発生しかねない。

とはいえ普段の食費を削るのは、風邪なりなんなりが流行するこの時期、抵抗力を削る行為にひとしく、非常に危険だ、危険すぎる。

厳しい、あまりにも厳しい季節である。


しかしこんな時こそ知恵を使わなければいけない。


まずは同僚から忘年会のお誘いがあったら、なりふりかまわず、自ら幹事を引き受けるべきだ。

幹事を制すものは、予算を制す。

自分以外の人間に幹事を任せてしまうと、何の空気も読まずに、途方もなく高い店を案内してきたりする。

おまけにそれがはるかに年下の後輩だったりすると「お、おう」と気前よく支払うしかなく、苦い涙を飲むことになる。

できるだけ安くておいしい店を見つけることに注力することで、支払いがグッとラクになるのだ。

特に今は最初のビール1杯無料などのありがたいクーポンがある店も多い、見逃してはいけない。


それから重要なのは、二軒目へのお誘いをどうしのぐかだ。

はっきり申し上げるが、あの「もう1杯だけ」というキラーワードとともに軽く繰り出される「二軒目」というのは、三軒目のお姉さんのいるお店であり、四軒目のカウンターだけのバーでの飲み直しであり、五軒目のおっさんだらけの不毛なカラオケであり、そして朝方のラーメンへと続く死のロードすべてを意味するのだ。

「ちょっともう一杯だけ・・・」と誰かが言いだしたら、それじゃぼくはこれで、と言うやいなや、走る。

けっして振り返らず、何か自分を揶揄している言葉が飛んできたとしてもグッとこらえて走り去る。

残りの小遣いを朝方のラーメンに全弾投入してまで守るべきものは、何もないのだ。

生き残りたければ、とにかく終電を目指して、ただ走るのである。


また、この年末を生き残るためには、常識にとらわれずにブレイクスルーすることも大切である。

誰が忘年会はお店でやれといったのだろう。

気が置けない同僚や友人とであれば、オフィスなり自宅なり、お金がかからない場所でやればいいのである。

ビールなどの飲み物は事前に安いところで大量購入することもできるし、焼肉や鍋も、お店で食べるよりもずっとコストを抑えることができる。

ただし、いくら場所代がかからないからといっても、公園ではやらないほうがよろしい。

凍死する。


とはいえ、忘年会に呼ばれるのはとてもありがたいことだ。

仕事をしなくなって、誰にも誘われなくなったらそれはそれでさみしいかもしれない。

今年も一年、ぼくと付き合ってくれてありがとうと、そういう感謝の気持ちはちゃんと伝えていきたいものだ。

ぼくは自分の力だけで働いているのではないから。


そんな気持ちをしっかりと胸に抱いて。


今年も、二軒目のお誘いがあったら、全力で走り去ろう。


まだ見ぬ未来と、終電を目指して。