イケメンじゃないから、おしゃれがたのしい。




おしゃれの要点はたった一つ、自分を冷静に肯定することだ。


まずは、自分の顔や、身体の特徴や、年齢による老化など、表面的な状態について客観的に観察してみる。

ただ鏡に映った自分を見るだけではなく、飲み会や旅行のスナップ写真などで、自分が意図せずに撮られたものや、他の人を撮ろうとした時に偶然自分が写りこんでいるものをいくつか眺めてみるのが良い。

はじめは、それをネガティブにとらえてみる。

自分の顔は、キツそうに見える。

痩せすぎて、貧弱だ。

シワが多くて、老けている。

次に、それをポジティブな言葉に変えてみる。

キツそうな顔ということは、ちょっと知的に見えることかも。

痩せているなら、色んなデザインの服を着ることができるかも。

老けているのであれば、思慮深い人だというイメージにつながるかも。

ここまで完了すれば、おしゃれに関する用事はほとんど終わっている。

あとは、そういった自分の「良い印象」を拡張するために、何をすればいいかを色々と試してみるだけである。


ここからは、とても楽しい作業だ。


なぜなら、服を選ぶ基準は、自分の中にあるからだ。

お店で試着する時も、自分の仮説が本当に正しいかどうかを検証するチャンスと思えばちょっとワクワクするし、あるいはもう一度自分のクローゼットを覗いてみれば、あれこのパンツ、半分に切っちゃったら素敵なショートパンツになるんじゃないかとか、違うアイデアが出てきたりする。

そうやって、色々と可能性を探っている時こそ、一番面白い瞬間なのである。

いま何が流行っているのかとか、黄金バランスは何だとか、そういうのは余裕があれば後で楽しめばいい。


まあたしかにその点でも、美男美女は、有利ではある。


雑誌などで提唱されているファッションスタイルの多くは、美男美女モデルを標準値に設定しているため、それについてあまり悩まずそのまま取り入れることができるからだ。

しかし、それは、あくまでおしゃれに関する仮説の1つでしかない。

僕にとってのベストな答えは、自分で見つけるしかない。

それじゃあ結局イケメンよりも苦労するには変わりないじゃないか、やっぱり不公平だ、と思われる方もいらっしゃるかもしれない。


さて、どうなのだろう。


人生において、他人から答えを与えられることほど、つまらないことはないと僕は思うのだが。