僕は長い間、表現者という仕事や立場にこだわり続けてきたが、
今は、もう自分が表現者であるかどうかに
とらわれるのはやめようと思っている。
偶然、自分が得意だったり時間をかけてきたりしたのが
言葉や映像を考える仕事であっただけで、
それが世の中に必要とされている限りは役に立ちたいし、
そうでなければ、こだわり続ける理由はない。
人間は、人の間、と書くだけあって、
どこかで他の誰かとつながっている。
僕は結局、表現を通して誰かとつながりたかったり、
誰かと誰かをつなげたかったりするだけで、
何かを作ること自体にこだわっているわけではない。
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僕がこだわり続けるのは、人間だ。
それも、すぐ隣にいる人だ。
インターネットのおかげで、
僕らはたくさんの隣人と出会えるようになった。
そして、満員電車でカバンをぶつけられて
殺意を向ける相手も隣人である。
むしろ、偶然、同じ舟に乗り合わせた運命の人である。
会社でいつも顔を合わせる大嫌いな同僚も、
お互いに偶然、今日も再会できた、運命の人でしかない。
そうやって僕らは毎日、運命的な出会いを果たしながら暮らしている。
その不思議さや面白さにどっぷりと浸かりながら生きていきたい。
だから今後は表現者とかいう便利な言葉にとらわれるのはやめて、
僕の本質は、そのあたりの下世話な欲求に
あるんだと明言していきたいと思う。