ブログを書くのは楽しい。
ブログに限らず、絵でも写真でもダンスを踊って動画をアップするのも、同じ。
すべて表現行為というのは楽しいものである。
だけど、自戒をこめて、何かを表現をする時に
気をつけておきたいことを書こうと思う。
気をつけること、といっても、
著作権とか肖像権を侵害するようなものは載せないとか、
誰かを中傷誹謗する内容は書かないとか、
そういう詳細な注意事項ではない。
大げさに言うと、表現の副作用から、自分の人生を守るための方法である。
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僕らは今、色んなメディアを利用して、さまざまな表現活動ができる。
そして表現内容やタイミングや色んな思惑の中で、
突然、自分が作ったコンテンツが強く支持されることがある。
その現象自体は、実に喜ばしいことであるし、
地道な努力をしてきた人であれば、それが報われたと感じる、本当にうれしい瞬間だ。
おまけに自分が尊敬する人物から褒められたり、多くの人から絶賛されたりすると
つい気分が良くなってしまい、周りが見えなくなる。
ここに、大きなワナがある。
心が開かれすぎてしまうのだ。
いわゆる「油断」とは、少し種類が違う。
表現というのは、少なからず自分の心の中をさらけだす行為である。
全身全霊を傾けて作り上げたものならなおさら、そうだ。
それが多くの人々に受け入られると、
相手の評価に対して大きな依存をしたり、
さらに期待に応えようとして無理をしたりしてしまう。
こうなると、表現者の心はバランスを崩しはじめる。
これまでは、自分なりのやり方とペースで発信してきたコンテンツも、
地に足がつかない、不安定なものになってしまったり、
自分の成功事例に捕らわれてしまって、ワンパターンになってしまったり、
はたまた、独りよがりの内容になってしまって、誰も理解できなくなったりする。
しかし、ここまではまだ良い。
所詮、こういうものは当たるも、外れるも、運次第。
うまくいったものも、いかなかったものも自分自身の表現なのであり、
次の肥やしにできると思えば、失敗もありがたいものだ。
まずいのは、それでも栄光にすがりつこうとしてしまう心の動きである。
これを避けるのは本当に難しい。
一度、自分自身の心の中をさらけ出し、それを受け入れてもらえた経験を捨てて、
またゼロから再出発するのは、頭ではわかっていても、心が受け入れられないことが多い。
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しかし、もし、こういう状況になった時は、
無理やりにでも、このグズグズしている気持ちを、
次こそはまたうまく行くんじゃないかと期待する心と一緒に
まるごと捨てることをおすすめしたい。
そうでないと、何もかもが消耗されていく。
他の仕事や私生活にも影響が出てくる。
そして何より、より魅力的な表現を生み出す妨げになる。
これは、あくまで僕のやり方でしかないけど、
何かを表現しようとする時に大切なのは
「楽しいな、うれしいな」という、機嫌のいい状態だと思う。
油断すると、ちょっと鼻歌でもこぼれてきそうなくらいの機嫌のよさ。
アイデアというのは非常に繊細なので、
それくらい甘やかされた環境でないと
なかなかこっちにやってこない。
鬼ごっこを楽しんでいる時の気持ちに似ている。
これって、ちょっとやりすぎかな・・・とか、
こんなこと言ったらさすがにマズイかな・・・とかいう
スリルを楽しんでいるくらいのほうが
表現アイデアというものは面白くなるものだ。
しかし、前述のように心が消耗した状態だと、楽しいアイデアなど出てこない。
「面白い表現でなければならない」
「たくさんの人々に受けなければならない」
「世界を変えるような大発明でなければならない」
そういう強迫観念を持っていると、僕の場合は、
絶対といっていいほど、いい表現は思いつかない。
「~せねばらならない」という言葉は、アイデアの天敵なのだ。
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さて、いい表現ができないと、メンタルをやられる。
おまけに周りからの自分の評価がどんどん下がる
(というか元に戻るだけなのだが)のが目に見えて分かる。
そして気がつくと、生活にもダメージが出ていたりする。
それがわかって自暴自棄になったり、
いやこれはオレの才能を誰も理解できないだけのだと
妙な妄想の世界にひきこもってしまったり、
いわゆる大人の非行に走ってしまったり、
まあ、症状は色々である。
とにかく、このダメージは長引くし、場合によると、
自分の人生に大きな影響を与えてしまう。
だから、もし自分が「過去の表現の成功にとらわれているな」と感じることがあれば、
とにかく、その経験を今すぐ、はるか遠くへと思い切って捨てるべきである。
何もかも捨てよとは言っていない。
一度でも、自分自身と向き合って見つけ出すことができた、自分だけの発見や、
それを他の人と分かち合えたという喜びは、良い思い出として、しっかりと覚えておけばいい。
今後、苦しい時やあきらめそうになった時に、きっと力を与えてくれるだろう。
しかし、もっと重要なことは、過去の栄光を振り返るよりも、
少しでも前に向かって歩き続けることだ。
そんなことで、今後やっていけるのだろうかって?
心配しなくても、大丈夫。
表現者にとって、一か所にとどまることは、死んでいるのと変わらないから。